窓辺の机

窓辺の机から世界を夢想

オフショア・バランシング ― アメリカの外交戦略

はじめに ロシアのウクライナ侵攻から1年以上が経過したが、情勢の基本的構図は変わらず、戦争は長期化の様相を呈してきた。 ただこの戦争で、「冷戦後」というひとつの時代が終わりつつあるようだ。1990年のソ連の崩壊と、アメリカが主導したグローバリゼ…

ミアシュマイアーの「対中国・エンゲージメント」批判

1980年代から築かれてきたアメリカと中国の関係は、ここ10年で徐々に悪化していたが、次第に加速し、亀裂から対立の様相を呈してきた。(まるで、同居パートナーの不仲が嵩じ、一方が「あれだけ良くしてやったのに、このざまか」、他方が「養ってもらったわ…

ミアシュマイアーの「NATO東方拡大」批判論

欧米とロシアの対立は、2022年2月のウクライナ侵攻で決定的となったが、その亀裂は2014年のクリミア侵攻で生じていた。このときミアシュマイアーは、「NATOの東方拡大がこれを招いたのだ」と批判した。これはプーチン・ロシア側も強調し、現在に続くウクラ…

鶴岡路人『欧州は目覚めたのか』 ― 要旨と注釈

鶴岡路人『欧州は目覚めたのか』― ロシア・ウクライナ戦争で変わったものと変わらないもの(東京大学出版会『ウクライナ戦争と世界のゆくえ』2022年8月所収) ロシアがクライナを侵略してから1年になる。バイデン大統領がキーウを電撃訪問し、プーチンが年…

止めることができる災厄

コロナへの規制が解除され、気持ちのいい季節になって、世界でも日本でも、街角や観光地に人出が戻ってきた。 コロナはまだくすぶっていて、冬にむかって次の波が心配だが、このままうまくいけば通常のインフルエンザのようになりそうな気配もある。3年前ま…

冷戦は終わっていなかった

「ひとつの地球」は幻想なのか?/ ”冷戦終結・冷戦後”という歴史区分/ 少し前までは「冷戦終結(冷戦終結後)」という歴史区分が定説のようになってきた。1989年のベルリンの壁崩壊とその後のソ連解体により、20世紀の後半を特徴づけた対立が終わり、世界…