窓辺の机

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ロシア軍の失敗の本質

Newsweek:グレン・カール:「ウクライナで苦戦するロシア軍、その失敗の本質」 (2022.5.21)

以下、その要約。

・民間人を標的とするのはロシア軍の伝統的ドクトリン。
・チチェン、シリアでは、爆撃で民間人もろとも都市を破壊するという手法が成功。
・電撃的に制圧し、残虐さや恐怖で威圧して征服。
・“戦争犯罪”など意に介さないどころか、「名誉称号」の対象。

 ロシアの軍事文化は貴族社会で発展したもので、自国の農民(=農奴)も使い捨ての駒にすぎず、ボルシェビキもスターリンも残忍に扱った。自軍の犠牲も厭わないのだから、敵国の民間人には人権もないのである。

 敵対や反抗には何倍もの報復と強迫で屈服させるという「エスカレーション・ドミナンス」。暴力的な攻撃性を前面に出して脅迫。(核兵器による威圧へ)。

 こうした暴力性は、自軍の欠陥の裏返しでもある。兵站の欠陥、組織的な指揮系統と連携や通信の欠陥、兵士の訓練や士気の欠如、略奪や腐敗の蔓延など。

 このようなロシアの軍事ドクトリンは変わらないだろう。

コメント

 なかなか手厳しい記事である。
 ゲラシモフが取り入れ、プーチンの手法と組み合わせた「ハイブリッド戦争」の手法は、エネルギー価格の高騰と重なり、ソ連崩壊後のロシアを大国化させた。しかしそれは、独裁と秘密警察とエネルギー依存経済による底の浅い強国であり、社会や国民の近代化、民主化という地道な努力を飛び越えたものであった。戦況は日々変化しているが、結局、ウクライナ戦争をきっかけにこの国は、司馬さんが喝破していた「古いロシア」(✻)へと再び退嬰していくように思える。

✻5/10「司馬さんのロシア論」